第10章 impulsively 枢√
「痛い……」
「悪いことを考えたお仕置き」
辺りは明るい。ということは、少なくとも夜ではないのだろう。
「ふかふかのベッド……」
「ここは僕の部屋だから、好きなだけふかふかに埋もれているといい」
「あの……聞いてもいいですか?」
「何を?」
「……零は、どうなったんですか?」
「さあ? 僕は知らない。処置は理事長に任せてしまったからね」
無事だといいんだけど。あんな状態の零をいつまでも一人にしておくことなんて、私には出来そうにない。ベッドから起き上がった。
「私、零の様子を見に行きます」
「部屋にはいないと思うよ」
「なら探します」
「絶対に見つからないよ」
「なら……見つかるまで探します」
玖蘭さんは静かに息を吐いた。
「錐生君のことなんて、忘れてしまうんだ」
「どうしてそんなことを言うんですか?」
「昨日の彼を見ただろう? 彼は……元人間のヴァンパイアだ。いずれレベルEに落ちる身。近くに居れば、いつ正気を失った彼に襲われるかもわからない」
「それじゃあ、誰が彼の傍にいてあげるんですか!?」
「一人の方が、彼の為だよ」
ならどうして零は、昨日私を抱きしめていたの? 何度も名前を呼んだの? 私にはどうしても……助けてって言っているようにしか聞こえなかったのに。