第10章 impulsively 枢√
『貴方、どうして自分の両親がいないか知っていて?』
『知るわけないじゃないですか……というか、どうして貴方はそれを知っているんですか?』
『知ってるに決まってるじゃない』
その口元は、怪しく歪められる。夢の中だというのに、私は額に冷や汗を滲ませた。何故だか嫌な予感がしたからだ。
『貴方から両親を奪ったのは……私だもの』
僅かに覗く、牙。そこで目の前は、ブラックアウトした。
ゆっくりと重い瞼を開ける。すぐ目の前に、何の表情も示さない玖蘭さんの無機質な顔が映った。夢が終わったと実感としたと同時に、息を吐いた。
「目が、覚めたんだね」
「……私はどれくらい眠っていましたか?」
「二日は眠っていたね」
「二日?」
そんなに疲労でも溜まっていたというの? いやいや、それにしてはおかしい。私が頭の中で一人会議を開いていると、玖蘭さんは私をぎゅっと抱きしめた。
「玖蘭さん?」
「……驚いた。目覚めないんじゃないかと思って、心配した」
「そんなわけ、ないじゃないですか」
「だって珠紀は、息を殺したように眠っているから、眠りながら死んでいるのかと思った」
そんなことあるわけがない。なのに玖蘭さんがいうと、本当みたいに思えて恐ろしい。痛みがなく死んでしまうのなら、それでもいいのかな。と思っていたら、その思考を読み取られたのか、玖蘭さんにデコピンをお見舞いされた。