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Bloody Signal

第2章 sleep



 暗い暗い夢の中。深海の底のように群青色をした世界が、私を包み込む。ただ沈んでいく。


 呼吸は出来る、目を開けることも出来る。瞼を開けて見上げれば、泡が空に向かって上昇していくのが見えた。空? 違う……海の上を目指しているんだ。きっと。

 生温い水が私を包み込んで、まるで誰かに抱かれているみたいに心地よくて、安心する。


 ゆらゆらと漂って……そうすれば、私の身体は自然と浮遊していく。




 ごぽっ。


 音がする。もう、水中にいる感触はなくなっていた。












「ん……っ」

「起きたかい? 珠紀」

「……ん?」


 瞼が軽い。ゆっくりと開ければ、視界に先程の玖蘭さんの綺麗な顔が飛び込んできた。驚いて、目を丸くした。びっくりして、声が出ない。


「驚いた? ごめん。まさかそんな顔をするとは思わなかったんだ。許しておくれ」

「あ……いえ」


 あれ? そういえば身体が宙に浮いている感覚がする。冷静になり始めた頭で辺りを見渡すと、未だ校舎内にいることがわかった。そして、私は玖蘭さんに……お姫様だっこされていた。


「玖蘭さん……どうして?」

「何がだい?」

「どうして、私を……?」

「思い出せない? 君、僕の目の前で倒れたんだよ。気絶? よくわからないけど、すやすやと眠り始めるから本当に驚いた。大丈夫だった? 間一髪抱き留めたから、たぶん怪我はないと思うんだけど」

「そういえば……どこも、痛くない、です」

「そう。ならよかった。もし痛いところがあれば、教えてね」


 玖蘭さんは優しく私に語り掛けては、心地よい速さで廊下を歩く。すれ違う生徒達はいない。だからかな、本当はこんなの……恥ずかしいはずなのに。意外と大丈夫。

 初対面なはずの彼に触れられて、怖がってもおかしくないのに……何故だろう? とても安心する。

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