第1章 call
「珠紀、大丈夫? なんだか少し顔色が悪いよ」
「え? そ、そうですか? たぶん気のせいですよ」
軽く会釈して「それでは」と一言残し、彼の横を通り過ぎる。
何か、違和感を覚えた気がした。何? よくわからない。あれ……?
目の前がぐらりと揺れた。あ、これは……。
「珠紀っ!?」
玖蘭さんの声が聞こえてくる。ああ、このままじゃ……倒れる。痛いだろうな、きっと。
そんなことをぼんやりと考えながら、私の意識はぷつりと電源が落ちたみたいに真っ暗になって沈んだ。
ナルコレプシー。
私は、この病気のせいで突然意識を失うことがある。それを知っている優姫と零はいつも心配して、寮まで送ろうかと言ってくれる。
私が夜間部を見たことがないのは、学園内で倒れるのを恐れて早々に部屋へ帰るからだ。
数年前のあの事件にあってから、私の世界は変わってしまった。