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Bloody Signal

第9章 mutate 枢√



 今日は学校。制服に袖を通し、時間に余裕を持って部屋を出た。

 あれから……互いに何を言ったわけでもなく、優姫は朝迎えに来なくなった。だからといって私が遅刻するというわけではなかったし、これが普通なんだと自分に言い聞かせて。

 何もかも変わってしまった気がして、寂しいと感じているのは私だけだろうか。


 変わることを恐れていた。それは喪失感と同じに思えて、嫌だった。変わることで、優姫も零も私の前からいなくなってしまいそうで……それがとても怖かった。



 教室へと足を踏み入れれば、変わらない優姫の笑顔がそこにあった。よかった、と安心する。


「おはよう珠紀! 最近はちゃんと一人で来れるようになって偉いね。倒れることもなくなってきたよね……」

「おはよう。そうだね、調子がいいのかも。でもそういう時にこそ、油断は禁物だよね」

「そうそう! 零だったらそういう時こそ慎重に、なんて言うのかな」

「そうかもしれないね」


 今日も教室の中には零はいない。そして、そんな中でも私の心の内を占めるのは昨日の玖蘭さんのこと。濃く刻み込まれた記憶は、まるで彼に焦がれているかのようにで……思い出しては顔が赤くなりそうだ。


「珠紀? 朝から百面相してるけど、大丈夫?」

「あっ……うん! 平気」


 優姫とは何処となくぎこちない時もあるものの、普段はそこまで変わらない。寧ろいつも通りと言える。ただ……放課後になると、少し違うような……ううん、私の思い過ごしかも。


 今頃、玖蘭さんは何をしているだろう? 寝てるかな……。


 席についてしまえば、心地よい風が頬を撫でる。本鈴が鳴った。今から授業だとわかっていても、私の意識は突如眠気に誘われる。この感じは……。

 そう気付いた時には、机に突っ伏して眠りについていた。

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