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Bloody Signal

第8章 inside 枢√



「そんなに驚くことかな? 僕は前々からもっと、珠紀の事を知りたいと思っていたけどね」

「そうなんですか?」

「優姫から名前を聞いていて、でも一度も姿を見ることはなかったし入れ替えの時も、顔を見せないでしょ? だからどうしたら君を一目見ることが出来るのか、そればかりが気になっていた時期もあったよ」

「……嘘みたいな話ですね」


 本当にそう。だって、あの玖蘭さんが顔を見たことがない頃から、優姫を通して知っていて……一目見たいなんて思っていたなんて。信じられない。


「嘘じゃないよ。理事長室の帰りで君を見つけた時、ああこの子がって内心浮かれていたんだ。優姫から聞いていたよりもずっと……」


 玖蘭さんは私の頬を撫でながら、不意に言葉を止めた。首を傾げると、玖蘭さんは私の背後へと声をかけた。


「一条、片付けは終わったのかな?」

「え……?」


 思わず振り返れば、にっこり微笑んだ一条さんがいつの間にか、私の真後ろに立っていた。


「うん、終わったよ。ねぇねぇ、二人で何の話をしてるの?」

「混ぜないからね」

「……枢は意地悪だね」


 何処となく一条さんがしょんぼりしているように見えた。けれどすぐに一条さんは明るい声色で「僕は部屋に戻るね」と千里を連れて部屋の扉を開けた。


「珠紀ちゃん、また来た時はゆっくり話そうね」

「あ、はい! 紅茶……本当に美味しかったです! あと、千里もケーキありがとう」


 二人は軽く手を振って、部屋を出て行った。

 あれ? ということは……。


「やっと二人きりだね、珠紀」

「玖蘭……さん」


 ぐっと、距離が近づいたような気がした。ううん、玖蘭さんは私との距離を詰めたのだからそう感じるのは自然だと思う。当然、なんだと思う。

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