第8章 inside 枢√
「はい、紅茶出来たよ。僕のお手製だから絶対美味しいよ」
「……一条さんって無駄に自信あり気に言うよね」
「仕方ないだろう? ほんとに自信ありなんだから!」
「一条のその自信、僕にも少し分けてほしいな」
「あははっ、僕の自信なんて枢には必要ないでしょ」
皆でテーブルを囲む。カップに暖かい紅茶が注がれる。あ……凄くいい香り。
「今回はアッサムにしてみたよ。珠紀ちゃん、もし苦手だったら言ってね」
「たぶん大丈夫だと思います。頂きます」
綺麗なカップを手に取って、一口飲んでみる。
「美味しいです、とても」
「それならよかった! さあ、ケーキもじゃんじゃん食べちゃおう」
「一条のテンションには困ったところがあるね……」
「ふふ、でも私は嫌いじゃないですよ」
楽しい。そう素直に思えることは、とても幸せなことだってちゃんと知ってる。まさか月の寮でこんなにも穏やかな時間を過ごすなんて、思いもしなかった。
「あれ? 一条さんはショートケーキのいちご、先に食べる派なんですね」
「好きな物は先に食べてしまいたい主義でね。あ、でも枢はその逆! 好きな物は大事に最後まで取っておく主義。以前ね、枢にショートケーキを差し入れしたら「こら、一条。その話はやめるんだ」
すかさず玖蘭さんが一条さんを取り押さえた。
ちょっと残念、知りたかったのに。
「……そんな目で見ても、珠紀には教えないよ」
「どんな目をしてましたか?」
「……教えない」
そう言って玖蘭さんは、一口分のチーズケーキをフォークに乗せて、私の口元へ持ってきた。