第8章 inside 枢√
「やあ、珠紀ちゃん! ようこそ、月の寮へ!!」
「一条さんはいつも元気ですね」
「珠紀、煩ければ遠慮なく言うんだよ」
「枢は珠紀ちゃんの前だと、僕の扱いが酷い気がする」
「そうかい? 気のせいだよ」
「珠紀ちゃん! 枢がいじめる!」
「えっと……」
いつの間にか私を囲んで二人が睨み合う。あの……やめてもらえませんか? 私がおろおろしていると、玖蘭さんが私の腕を掴んで引き寄せた。
「く、玖蘭さん!?」
「珠紀はこっちに座って。ね?」
「枢ずるい」
「一条は紅茶の準備を頼むよ」
「もう、仕方ないなぁ」
玖蘭さんと仲良くソファーに腰掛けながら、一条さんの紅茶を待つ。可愛らしいティーセットを並べて、一条さんはとても楽しそうに見えた。
「玖蘭寮長」
「ん? どうしたの、千里」
ひょっこり扉を開けて、千里が顔を覗かせている。
「ケーキ、持ってきたんで俺も混ぜて下さい」
「しょうがない子だね。いいよ」
千里はケーキの箱を持って、部屋の中へと入る。だんだん賑やかになり始めるお茶会に、私は少なからずわくわくしていた。こういうのは楽しい。優姫達といるのも好きだけど、こうして賑やかな中にいるのは……もしかしたら初めてかもしれない。
「珠紀は嫌いなケーキある?」
千里が箱を開け、私にケーキを見せてくれる。王道のショートケーキにフルーツタルト、チョコレートケーキにチーズケーキ。凄い、王道の四種が一度に……!