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Bloody Signal

第7章 Dissonance 枢√



「あのね、珠紀は玖蘭先輩のこと……っ、きゃっ」


 ぶわっと大きく風が吹く。ふわりと捲れそうになるスカートを互いに抑え、突風が去るのを待った。

 心がざわつく。吹きすさぶ風のように。ざらりとした感触と共に。


 私は何も知らない。玖蘭さんのことも、彼の優姫への想いも。彼の……考えていることも。そして、優姫が何を私に言おうとしていたのかも。


「玖蘭さんが……何?」

「……あ、ううん! ごめん、なんでもないんだ。その、えっと……なんだか珠紀と玖蘭さんって仲良いよねっ」

「フラワーギフトデイで少し話して、そこからちょっとだけ話せるようになっただけだよ。優姫の方が、ずっと仲がいいと思う」


 どうしてだろう? この違和感は何?


 ぎこちなく「そっかな」と笑う優姫を見て、私は言葉にならない想いを抱えてしまったように思えて……。


「優姫、私は寮に帰るね。調子のいい時に帰っておかないと、何処かで倒れちゃいそうだから」

「そう……だよね! うんっ、また明日ね! 珠紀っ」


 笑顔で手を振る彼女に背を向けた。


 ちらりと振り返ってみれば、優姫が浮かない顔で俯いていた。そうして前を向く、けれど私も顔を上げては歩けそうにない。足元を見て、歩いていく。

 後ろめたいことなんて何もしていないのに、後ろめたい想いさえないはずなのに。どうしてか優姫に申し訳ないことをしているような気持ちなってしまう。


「玖蘭、さん」


 名前を呼ぶと心が暖かくなる。それだけで、明日も頑張ろうだなんて思える。


 玖蘭さんに会える日々が、嬉しいと感じる私がいた。

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