• テキストサイズ

Bloody Signal

第7章 Dissonance 枢√



「珠紀。今度の休みに月の寮においで、一緒にティータイムをしよう。そうだね……優姫と一緒に来るといいよ」

「ありがとうございます。えっと……授業、頑張ってくださいね」

「ああ、うん。もう少し珠紀と一緒にいたいけど、仕方ないね」


 そうは言うものの、私から離れると今度は優姫の元へと歩み寄る。いつも通りのやり取りを見せては、止める人物がいないことに気付く。


 ――零、ほんとにこっちにも来てないんだ……。


「珠紀ちゃん」

「っ……、はいっ。何ですか……一条さん」

「枢に無防備なとこ、見せちゃ駄目だよ。そうして学校で困るのは、君でしょ?」

「……すみません」

「また子犬みたいにしょげてる」


 一条さんはふんわりと微笑んで「怒ってないよ」と優しく頭を撫でた。

 一瞬、ぞくりと冷たい視線が、何処からか私を射抜いた気がした。


「一条、何してるの。行くよ」

「今行くよ、枢。それじゃあね、珠紀ちゃん」


 立ち去る一条さんを目で追いながら、玖蘭さんへと視線を移す。玖蘭さんの突き刺さるような視線が、真っ直ぐこちらに向けられている。何? 私、何かしたのかな……。

 玖蘭さんの優しくも凛とした声が、私を呼ぶ。


「珠紀」

「……は、はいっ!」

「またね」


 気のせい……? ふっと笑みを向けた彼は、一条さん達と共に校舎へと入っていく。途中、千里と目が合って小さく手を振ってくるものだから、私もお返しとばかりに手を振った。


 女子生徒達が立ち去る中、私と同じようにいつまでも夜間部を見つめている優姫の姿が浮き彫りになる。


「……優姫」

「あ、珠紀! まさか見に来てるなんて思わなくて、びっくりしたよ」

「うん……そうだね」

「あのさ……珠紀」

「ん?」


 優姫は言いにくそうに、迷ったように「えっと……」と何やら言葉を探している。彼女が何を言いたいのか私にはわからなかったけど、友達だからちゃんと聞きたいしちゃんと答えない。そういう思いからか、優姫が話し始めるまで黙って待った。

/ 276ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp