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Bloody Signal

第7章 Dissonance 枢√



「もしかして珠紀ちゃんも本を読みに?」

「読みにというか、返却が目的です」

「そうなんだ。と言っても、既に図書委員さんは僕に鍵だけ預けて教室に戻ってしまったよ」

「え……?」


 通りで私と一条さん以外の人の気配がないわけだ。図書館は基本的に静かで、人も少ない。だからあまり気にしていなかったのだけど……困った。


「珠紀ちゃんには悪いけど、また放課後来てもらうしかないね」

「そうですか……とても残念です」


 今日は用事を済ませて、普通科と夜間部の入れ替えを狙って玖蘭さんに一目会っておこうと思っていたのに。


「まるで叱られた子犬みたいだね、珠紀ちゃんは。そんなにしょげなくても返却日が今日なら、時間はあまり関係ないでしょ」

「そうですけど……この時間に返すことに意味があったんです」


 一条さんはくすっと笑うと、私の頭を優しく撫でた。これは……慰められているのだろうか?


「ふふ、よしよし」

「私は犬じゃありません……」

「じゃあ猫? 兎? 狸?」

「……狸って何ですか」


 一条さんはマイペースに「狸って可愛いよね」と嬉しそうに述べた。そもそも本物の狸を見たことがないし、狐なら……狐なら辛うじてわかるのに何故狸?


「そういえば、以前狐がライフルを構えている写真を見たことがあるんだ! あれは本当に可愛いよ。いや、勿論人間がただそう見せて持たせているだけなのはわかっているんだけど……」


 今度は狐か。


「とりあえず落ち着いて下さい」


 急に饒舌に語られても、困ります……とても。


 一条さんは気を取り直したように、手元に積んでいた一冊の本を私に差し出してきた。

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