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Bloody Signal

第6章 moon 枢√



「玖蘭さんが、迷惑でないなら」

「迷惑だなんて……寂しいことを言わないでほしいな。毎日遊びに来てくれてもいいんだよ?」

「学校があるんで無理です」

「……珠紀は変に素直で困るね」


 苦笑いを浮かべた玖蘭さんは、急に私をお姫様抱っこで抱き上げた。


「玖蘭さん!? な、何を……っ!」

「寮に帰るんでしょ? 送ってあげる。いいよね?」

「か、構いませんけど……会場の方はいいんですか?」

「今は君の方が大事だよ。倒れたとわかったら、心配して珠紀の事を探しに寮まで来る子がいそうだからね」


 それは優姫のことだろうか?

 この状況下でも、玖蘭さんは一時も優姫のことを忘れたりはしていないのかもしれない。なんだか、羨ましい。


「玖蘭さんが優しいのは、優姫が私を大事にしてくれているからで……玖蘭さんの意思ではないんですね」

「どうしてそう思うの?」

「私を大事にしてくれるのは、優姫もそうだからだと……以前玖蘭さんが言っていました」

「そうだね……。でもそれなら、直接君に触れる必要なんて、僕にはあったのかな。やり方なら何通りもあったと思うけどね」


 ぎゅっと腕に抱かれ、私達は保健室を後にした。



 月明かりが照らし出す廊下を歩きながら、沈黙が包み込む。けれどすぐ、玖蘭さんが口を開いた。


「珠紀は不思議な子だよ。無関心ではいられなくなる」


 玖蘭さんの言葉を聞きながら、再び意識は途切れ始める。深い深い眠りが私を引きずり込もうと、忍び寄る。


「玖蘭さん……」


 彼の名を呟いて、私は眠りに落ちた。


 貴方の優しさを、どうかどうか。私だけに、向けてほしいと……。

 淡く、願う。

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