第6章 moon 枢√
「あ、笑った顔可愛いね。ふふ、珠紀ちゃんは笑ってる方がずっと魅力的だよ」
「え!? そ、そんなことないですよ……っ」
「照れちゃって、可愛いなぁ」
「もうっ、からかわないで下さい!」
怒ったふりをしてみるけど、一条さんの笑顔の前には歯が立ちそうにありません。
「それにしても、ナルコレプシーなんてまた厄介な病気を抱えているんだね。学校生活は順調?」
「あ、はい……優姫や零が気を遣ってくれているお陰もあってか、何とか無事に過ごせています。まぁ……何度かクラスメイトの前で倒れてしまって、気味悪がられていますけど」
「そっか……自分とは違うものを理解するのって難しいもんね。よしっ、もし何かあったらお兄さんを頼りなさい!」
「え……?」
「と言っても、夜間部だから今後関わる機会は普通科ほど多くはないと思うけど。あ! 夜は駄目だけど、朝や昼なら月の寮に遊びに来てもいいよ! 寧ろ大歓迎っ。枢もきっと喜ぶだろうし」
「お邪魔して大丈夫なんですか……?」
「勿論! その時に、今度は珠紀ちゃんのお話を僕に聞かせてね」
にっこりと微笑んで、一条さんは私の頭を優しく撫でた。玖蘭さんとは違う手のぬくもり。
「ありがとうございます。そんな、気を遣って頂いて」
「何を言ってるの。僕がそうしたいから、やっているだけだよ。珠紀ちゃんはいい子なんだね、君こそ人を気遣える人だ」
そんなことはないと思う。もしそうだとしたならば、目の前にいる一条さんにこんな迷惑をかけずに済んだだろうに。