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Bloody Signal

第6章 moon 枢√







 暗い、暗い場所。でもわかってる、これは夢の中。


 私には小さい頃の記憶がとても曖昧で、ほとんど覚えていないに等しい。それでも今日まで何事もなくやってきたのは、私を拾って育ててくれた黒主さん……理事長のお陰。

 気が付けば世界は闇に包まれていた。右も左もわからないまま、はっきりとした記憶の始まりは病室からだ。目が覚めた時、私の目の前にいた黒主さんがいてくれた。そして残酷な現実と共に、告げられた言葉を今でもはっきりと覚えている。


『珠紀ちゃん。よく聞いて、君の両親は……』


 私が覚えている過去の記憶といえば、鮮明な赤と……真っ白な病室。そして……。

 両親がヴァンパイアに殺されたということくらい。



『珠紀は私が怖い?』


 微かに女の人の声が、記憶の片隅に残っている。それくらい……だろうか。


 貴方は一体誰なの? 私とどんな関わりがあるの? いつか、全てがわかる日が来るのだろうか……。








 次に目が覚めた時は、白い天井が印象的な見たことのある部屋。あ、わかった。ここ保健室だ。


「気が付いた? どこも痛いところはない?」

「……おはようございます」


 相手はきょとんとした顔で私を見ていた。しまった、何を呑気に挨拶をしているのだろう。やり直し、と言わんばかりにもう一度彼の質問に答えた。

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