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Bloody Signal

第5章 gift



「そのドレス、似合うね」

「ほんと!? えへへ、玖蘭先輩に貰ったの! 折角だから着てみたんだけど……ドレスのお礼を言いたいのに、玖蘭先輩何処にもいないの」

「……そうなんだ、何処にいるんだろうね」


 けして優姫に意地悪をしたいだとか、私が彼を独占したいとか、そういう気持ちから来たものじゃない。ただ……もし一人でいるなら、そっとしておいてあげたいなんて思えて。優姫に玖蘭さんの居場所を、正直に教えることが出来なかった。

 私……優姫の友達失格かな? でも、一人の時間って邪魔されたくないものだよね……。でも優姫なら寧ろ喜ぶのかな? わかんないや……。


「その白薔薇、珠紀の部屋にあった花じゃない?」

「うん、そうなの。誰かに贈るつもりは……ないんだけど。もし贈るなら、この花がいいなって」

「ふふ、そんなこと言って……本当は贈りたい相手、決まってるんじゃないの?」

「それは……」


 優姫にそう言われて、心の中に彼の顔がぼんやりと浮かんでくる。そう、ただ一人、彼の顔が。


「珠紀ってなんだかんだ、素直じゃないよね。普段は結構素直なのに」

「優姫の方が素直です」

「上手く言えないけどさ、珠紀のその気持ち! 大切にしてほしい。贈りたい相手がいるなら、贈るべきだよ。その方が、その花も喜ぶと思う」

「……いいのかな、こんな一輪の白薔薇でも」

「珠紀の想いが籠っていれば、どんな花でも相手の人は嬉しいと思うよ」


 そうだといいなと思う。あの人が……どんな顔をしてくれるか、それを想像した時早く渡したい気持ちに駆られる。


「優姫、私……っ!」

「うん。行ってきなよ、その人のところへ」

「……行ってくるっ」


 優姫に小さくお礼を言って、人垣を掻き分けて小走りで急ぐ。


 まだいてくれてるかな……? 受け取って、くれるのかな。



 一輪の白薔薇を胸に抱いて、私はあの人のところへ向かった。

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