第5章 gift
「可愛いね、本当に貰っていいの?」
「うるせぇから早く貰っておけ」
「……優しくない」
「あ?」
有難く受け取ることにする。袋に瓶も入れてしまえば、塞がり始めていた手が空いた。今私の手にあるのは、一輪の白薔薇くらいかな……。
「その白薔薇は?」
「えっと……これはその、私ので……」
「……。誰かに、あげるのか?」
零の方へと視線を向ければ、真剣な眼差しで私を射抜いていた。そこまで気になるのかな? でもこの花の送り先は未だ未定。
「ううん、何も持たずに行くのはあれかと思って、それで持ってきただけなの」
「そうか……」
彼の視線は何処となく泳いで見えた。一呼吸おいて、零と視線が絡む。
「俺、もう行く。風紀委員だし」
「あ……そうだよね。えっと、これ……ありがとう」
微笑んでお礼を言えば、零は顔を逸らして「あっそ」と返した。素っ気なく思えるけど、これが零なんだと思えば可愛くも思えてくる。
「珠紀」
「なぁに?」
「……いや、なんでもない。じゃあな」
何か言いたそうにしていたけど、何を言おうとしていたんだろう? 気になるけど、もう彼は背を向けて立ち去っていた。
気付けば私に手には、三人から贈られた花で囲まれていた。どうしよう、こんなの予想外。
遠くの方から「珠紀!」と呼ぶ声が聞こえた。これは優姫かな?
「あれっ!? 珠紀ったらもうそんなに花を貰ったの? 凄いなぁ、私なんてまだ一本も貰ってないのに」
「そうなの……?」
玖蘭さん、なんで優姫に花を贈らないんだろう?
そういえば、今日の優姫は制服姿ではない。どうやら情報通り、玖蘭さんが贈ったドレスを身に纏っていた。