第5章 gift
「……困った」
「何が困ったんだ?」
「零……」
声のする方へと振り返れば、不機嫌そうにしている零がいた。たぶん風紀委員の仕事のせいで、純粋にこのイベントを楽しめないせいだと思う。優姫は今どうしているだろう?
「優姫なら玖蘭枢に贈って貰ったドレスなんか着て、奴を探してどっか行った」
「風紀委員なのにいいの……?」
「いいわけねぇだろ!」
不機嫌の理由は、どうやら優姫が原因みたい。
「お前さ……なんだかんだ楽しんでるな」
「そう?」
「おう……その髪に、手の中にある物」
零の視線は呆れたように、赤薔薇と瓶に注がれる。指摘されてしまうと、言い返せないわけでして……そのままぐっと黙り込んだ。
「はぁ、まぁ別にお前は風紀委員と関係ねぇから、勝手に楽しめばいいけどよ。油断するなよ? こんな場所で倒れられたら迷惑だ」
「あ……う、うん」
そうだよね。すっかり忘れてた……。最近は少し調子がよかったから、何も考えていなかった。この人の数の中倒れたら、普段の日常生活にも支障が出そう。
「とりあえずこの袋にその瓶、入れたらどうだ? やる」
「ありがとう……って、何か入ってるけど」
渡された袋の中には、可愛らしいサボテン……? なんでサボテン?
「サボテンは小さいし、その瓶一つくらいなら入るだろう」
「え? あ、うん。それは有難いんだけど……このサボテンはどうしたらいい?」
「……だから、やるって」
「どういうこと……?」
「お前にあげるって言ってんの! 意味くらい理解しろ馬鹿っ!」
「うっ……」
あ、サボテンの一か所に小さな花が開いていた。可愛い……。サボテンにも花が咲くのは聞いたことがあったけど、本当だったんだ。