第5章 gift
今日は一段と制服が重く感じる。
「あ……今日、フラワーギフトデイ」
忘れていたというわけではないけど、どうにも誰かに花を贈る気分になれずにいた。うーん、でも何も持たずに行くわけにもいかないか……。
「これにしよう」
窓際に飾られていた花を一輪、手に取る。大事に今日まで枯らさない様に育ててきた花、誰かの手に渡るのならそれもまたいいように思う。
「よし……ラッピング用の材料が多少残っていてよかった」
適当に包むと、それを持って部屋を出た。
お迎え? 今日は二人共風紀委員の仕事がある為、遅刻してもいいから一人で行くということになった。といっても、数分前に過保護な優姫からモーニングコールがあったのだけど。
――そこが優姫のいいところだよね。
すれ違う生徒達は、特に女子生徒は見てわかるくらいにそわそわしていた。イベントに便乗して告白する人もいるくらいだもの。そりゃそうか……。
昨日の教室での出来事が頭を過るが、制服を着てここまで来たわけだし……帰るわけにも、いかないよね。
そっと教室の扉を開けた。
「おはよ、珠紀」
「あ……おはよう、零」
まさか零がいるとは思っておらず、少しだけ拍子抜け。彼がいるとわかぅていたら、こんなにも緊張しなくてもよかったのでは?
「風紀委員の仕事は?」
「ある程度終わった。だからいるんだろ、馬鹿か?」
「ばっ、馬鹿じゃないよ!」
「なら寝ぼけてんのか?」
「寝ぼけてもいないよ……」
朝から零に馬鹿にされるなんて、心外である。