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Bloody Signal

第1章 call



「遅い! ほら、行くよっ」

「あ、ちょっと……っ」


 優姫に手を引かれ、廊下を走り抜ける。寮から学校まではそこまで遠くないのに、歩いても間に合う時間だろうに、それでも優姫はいつもこうして元気いっぱいで私を連れ出す。

 朝が弱い私の為に。


「珠紀は私がいないと、学校にも行けないんじゃない?」

「それは大袈裟」

「そんなことないよ! 珠紀ってば、眠ると目を覚ますのに時間がかかるじゃない」


 そうかな? と思ってみるけど無意識なんだから仕方ない。

 眠ることが好きというわけではない。ただ、眠り始めると一般的な人よりも自分で目を覚ますのが難しかったりする。特に、とある症状が出た時は、尚更。


「遅刻したら、零に怒られちゃう!」

「怒られてもいいからっ、もっとゆっくり……」


 しんどい。息が苦しい。優姫は足が速いから着いていくのが大変だ。


 ずっと前にも、こうして必死に足を動かして駆けていたことがあったように思う。いつだったかな……? 思い出せない。もしかしたらそれはただの錯覚なのかもしれない。

 見たことない景色なのに、見たことがあるような気がするのと同じで。

 曖昧で、不確かで、そういうもの。


「優姫……っ」


 彼女の名を呼ぶ。太陽みたいに明るくて、可愛らしい彼女の名を。


「なぁに?」


 そうすれば、彼女の笑顔が真っ直ぐこちらを向くから。ああ、これは夢じゃないんだと実感する。

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