第33章 love 千里√
届かなくてもいい、この想いを伝えられなくても。
俺は、珠紀が好き。珠紀の事を、愛してる。だから今度こそ、何があっても珠紀を守るから。他の誰かを君が愛しても、俺の事なんて何も思い出せなくても。俺はきっと……珠紀を守り抜くから。
◇◆◇
「せん……り」
「珠紀……?」
少しずつ、私の感覚が自分の元へ手繰り寄せられていくのを感じる。千里の今までの記憶が一気に流れ込んできて……私はようやく、全てを知ったのだと自覚する。
「ごめんね……珠紀をそんな身体にしてしまったのは……俺のせいなんだ」
ゆっくりと千里が私から離れていく。戸惑う気持ちの方が……ずっと大きい。どうしたらいいのか、わからない。
千里は手にあるナイフを私に握らせると、刃を自らに向けて儚げに……言った。
「珠紀。君には俺を傷付ける権利がある。俺の事……憎いよね? 俺を……殺してもいいんだ」
「……っ」
「俺は、珠紀にもう一度会えて嬉しかった。本当に……嬉しかったんだ」
千里の綺麗な瞳から、ぽろぽろと涙が零れていく。
「全て俺のエゴだった……っ、わかっていたけど……珠紀を失いたくなくて、俺は一番してはいけないことをしたんだ。ごめん…ごめんね……っ」
彼の汚れた手が、私の頬を撫でる。それでも嫌じゃないと思えるのは、きっと私が……。
「……愛してる。珠紀、君だけが俺を狂わせる。あの頃からずっと……俺は珠紀だけを愛している」
私はナイフを振り上げた。
もう二度と、誰も悲しまなくて済む様にと。