• テキストサイズ

Bloody Signal

第33章 love 千里√



「なぁ、その子のこと……助けたい?」

「……助けたい」

「その為に、記憶を消さなくてはいけなくても? 少女の、記憶を」

「構わない……。生きていて……くれるなら」

「幸い彼女は純血種である沙耶に、血を吸われて殺されたということかな。まぁ、体内に沙耶の血が残っているのなら望みはある」

「本当か!?」


 俺がそう食いつくと、黒先生はにんまりと笑った。どうせろくなことなど考えていない、そんな顔だ。でも、もし……珠紀が助かる術があるのなら。


「ああ、ただこれからやろうとしていることは、例え少女の記憶が戻ったとしても、君を憎む結果になるかもしれない。それでもいいの?」

「それでも……それでもいいから! 俺を憎むだけで助かるのなら、珠紀が生きてくれるなら……俺はそれでいいんだ!!」

「……いい子だ。僕はこれでも医者だからね、任せなさい。じゃあ、あれを借りるとしますかね」


 すると黒先生は、死んでいる沙耶に近付いてその身体を抱き上げた。何をするつもりだ?


「坊ちゃん。その子を助けるためには……沙耶の"心臓"を移植する他ない」

「……!!」

「その子は胸を貫かれている。大方はそれが死因だろう。そうなると……もう手の施しようがない。潰れた心臓が元に戻らないだろう? 例えヴァンパイアとて。それに沙耶の心臓を移植すれば、沙耶の特性を得ることが出来るかもしれない」

「特性?」

「沙耶は純血種として、いくつかの特性を持っている。一つは自然治癒力が通常の倍はある。つまりは怪我の治りが極端に早いということ。そうなれば、手術の痕さえ残らないくらい綺麗に傷が治り移植の成功率も高いということ。幸い彼女は、沙耶に血を吸われている。問題はないだろう」

「他にもあるのか……?」

「そうだね。他は、純血種として変異する可能性が非常に高い。沙耶のもう一つの特性は、自らの特性を相手に伝染させること。丸々彼女に、それが移るかもしれないね……ただそうなると」


 黒先生は少し考えて、そして続けて言葉を俺に投げかける。

/ 276ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp