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Bloody Signal

第33章 love 千里√



「大丈夫ですか!」


 触れようと手を伸ばしたところで、手は止まる。倒れている人物は……珠紀の両親だった。二人共、目を開けたまま……死んでいた。息をしていない、呼びかけてもぴくりとも動かない。これが……これが人が死ぬってことなのか?

 初めて直面する人の死に、気持ち悪さで吐き気がしてくる。けれど今はそんなことで怯んでいる場合じゃない。珠紀がいない……つまりはまだ生きている可能性が高いということ。


「何処に行ったんだ……珠紀」


 遠くの方で、僅かに珠紀の香りがした気がした。何でもいい、俺はそこへ向かうしかなかったんだ。


 縺れそうな足を無理矢理鞭打って、俺は走り続ける。彼女の両親とした彼女を守る……という約束のためじゃない。俺自身が、ただ単純に彼女を守りたくて、助けたくて……それだけだ。

 葉で頬に傷を作りながら、俺は木々を潜り抜け開けた場所へと飛び出した。


「……あっ……ああ……」


 俺の見たくない現実が、そこにはあった。

 大量に血を胸から流し、目を閉じている愛しい……人。


「珠紀……? 珠紀っ!!」


 慌てて彼女へと駆け寄る。しかし出血は止まらないし、だんだん体温は冷たくなっていく。俺は……俺は彼女を助けられないのか?


「珠紀! お願いだから、目を開けて……! 嫌だ、こんな別れってない……っ。珠紀! 珠紀!!」


 願った。何でもいい、誰でもいい。神様でも悪魔でも何でもいいから、珠紀を助けてくれ……!
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