第4章 puzzlement
『珠紀は私が怖い? 吸血鬼の私が、怖い?』
吸血鬼……。貴方は吸血鬼なの? 私は貴方を知っているの? ごめんなさい。何も……何も思い出せないの。
『珠紀。生きて……どうか、生きてほしい。私が奪った命の重さごと』
……貴方は、誰なの?
不意に意識が浮上する。喉の渇きのせい? さっきのは夢だったのかな。それにしては聞いたことがあるような声な気が……。
「外、暗い」
時刻は丑三つ時。静寂が包み込む部屋の中で、私は何を思ったのか上着を羽織って外へと飛び出した。
月の光が辺りを包み込んで、ふんわりと夜の闇を照らす。髪を揺らす風が心地よい。もしかしたら、優姫達に見つからないとも限らないけど、この時間だし流石の風紀委員も寝ている頃だよね。
私はお昼休みに寄ったあの中庭まで、思わず来てしまう。
誰かがいるとか、いないとか、そういうのは考えていなくて。ただ気が付いたらここにいた。不思議とそこに、誰かの影が見える。
「誰か、いるの?」
「……珠紀?」
ベンチに座っていたのは、玖蘭さんだった。
どうしよう……流石に、怒られちゃうかも。
「こんな時間に外出だなんて、悪い子だね」
「……ごめんなさい」
「怒ってないよ。おいで」
玖蘭さんは読んでいたと思われる本を閉じた。邪魔、しちゃったのかな……。申し訳ない気持ちがじわりと胸の内に広がった。誘われるがまま、私は彼の隣へと腰掛けた。