第4章 puzzlement
「ちゃんと来れるから、心配しないで」
『……迎えに、行こうか?』
「優姫みたいなこと言ってる」
このまま、互いに変わらないでいられるのだろうか? 変わらないなんてものは、きっとこの世に存在しないけれど……それでも、このままがいいと望んでしまうのは駄目なこと?
私もいい加減、二人に甘えるのをやめた方がいいのかもしれない。だから、クラスの女子生徒達にあんなこと……。
『うるせぇ。絶対迎えに行くから、覚悟しとけ』
「零が乱暴さんだ」
くすっと受話器越しに笑えば、零はまた小さく「うるせぇ」と吠えた。
私にはたぶん、兄妹はいないと思うけど……もしお兄ちゃんがいたらこんな感じだったりして? なんて思ってしまう。
「零、ありがとうね。でも本当に大丈夫だから、ちゃんと学校に行くから」
『……そんなに俺に迎えに来られるのが嫌かよ』
少し不貞腐れたような彼の声が聞こえてくる。
「拗ねてる?」
『ちげぇよ! ああ、もう勝手にしろ!』
ぶちっと電話が切れる。自分からかけておいて切るなんて、意外とわがままな人だ。
「あ……また……」
今度こそ私の眠りを妨げるものはない。ゆっくりと、眠りの奥へと誘われていく。布団の感触を全身で感じた途端、私の意識は世界から切り離された。
遠い遠い記憶の向こう側。誰かが私に笑いかける。
『貴方、珠紀って言うのね。良い名前ね』
誰? 私の名前を呼ぶのは、誰……?