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Bloody Signal

第33章 love 千里√



 大きく心臓が高鳴る。嫌な感覚が更に私を支配し始めて、もう感覚どころか音も光も失ってしまいそうだ。それくらい……私は、ただ目を見開いていた。

 心臓を移植した? 誰の心臓を? 沙耶、姉さんの心臓? 何を、何をそんな冗談を……。


 本当に冗談なの?


「あはははッ! その様子だと、本当に珠紀は何も知らなかったらしいわね! ははっ、傑作だわ……っ」

「珠紀! そこにいるんでしょ? 聞こえてたら返事、してっ!!」


 沙耶姉さんはカッターナイフで掌に傷を作る。痛い、この痛みを私は……あの日。

 姉さんが自ら流した血に、口をつけて嘲笑うように言葉を続ける。


「そう、あの日……心臓を貫かれた珠紀に生き延びる術が最早なかった。いくらヴァンパイアに変異したところで、心臓を貫かれていたらどうにもならない! だから千里は考えた……そうなのでしょう?」

「……っ」


 千里の顔が歪む。本当なのね? 嘘じゃ……ないんだね。


「ごめん……珠紀。黙っていて、ごめん」


 嘘じゃないんだ……それが、真実なんだ。絶望? そんなこともわからない。視界が暗くなっていく……もう、いい……このまま闇に、落ちていまえば。


「珠紀……それでも俺は、珠紀を守りたかった」


 私の意識が消えるその前に、千里が私の手を掴んで唐突に首に噛みついた。ぐっと力を込められて、血が流れるのを僅かに感じる。

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