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Bloody Signal

第32章 true 千里√



「やっぱりってことは、私が出て来ることを貴方は知っていたのね?」

「知っていたというか……黒先生に校内で会った。もしかしたら、と思っただけ」

「先生? ああ、あの先生ね……そうよね、珠紀を生かすために……貴方は彼に依頼した。彼女を助けてくれって。大方そんなところでしょ? あの人……ヴァンパイアに関する研究には余念がないもの」

「あんたには関係ないよ……」

「関係なくなどないわ」


 姉さんは、ナイフを自らの心臓辺りに持っていく。


「教えてあげましょうか、珠紀。貴方の最大の秘密を……」

「……! やめろっ!!」


 千里が私に駆け寄る。その手で、ナイフの刃を掴んで姉さんから奪い取る。姉さんは奪われることなど、どうでもいいかのように手を離した。刃を直で握っていた千里の手から、ぽたりと血が流れ落ちた。


「あら、もしかして千里は珠紀に教えてあげてないのかしら? どうして彼女が、私に胸を貫かれて生きていたのか。その理由を」

「珠紀には俺から伝えるつもり。あんたの出る幕はない……っ」

「煩いガキね」


 姉さんの手には、カッターナイフ。あれは……私の文具の中から、か……。


「珠紀、よく聞いておきなさい」


 鼓膜が揺れる。


「珠紀っ、聞くな……ッ!」


 千里の声を聞いて、姉さんの声が……私の心を覆い隠していく。


「珠紀。あの日貴方が助かったのわね……」


 真実なんて、いつも残酷だ。知ったところで、自らの心を癒すわけでもなく助けるわけでもなく。失った過去の先にあるのは、どちらにしてもあまりいいものではないことくらい私にだってわかっていた。

 必死に叫ぶ千里に、私はどうして彼が最後の最後まで私にこの事を黙っていたのか、今なら少しわかるような気がした。それが千里の罪の意識から来るものなのか、それとも単なる優しさという名の愛情から来るものなのかはわからなかったけど。






「私の心臓を、貴方に移植したからよ……!!」



 真実なんて、知らなければよかったんだ。


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