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Bloody Signal

第31章 shade 千里√



「別に無理に思い出すことはないよ。ああそうだ、君……ナルコレプシーの方はどうだい?」

「……!!」

「その反応だと、相変わらずナルコレプシーには悩まされているみたいだね」

「貴方は私がナルコレプシーなのを、どうして知っているんですか!? 私は……貴方と何処かで会ったことがあるんですか?」

「まぁ、適当に何処かで会ったことはあるだろうね。君を診察したことも、なくはないからね」

「そうなんですか……」


 もしかしたら、私が入院していた時に見てくれたお医者さん……とか?」


「君にいいものをあげるよ」


 その人は、小さな瓶を取り出して私の前に差し出す。中には……カプセル剤が入っていた。なんだろう、こんな怪しすぎるもの……貰っちゃいけないような。


「あの……」

「ああ、知らない人にこんなもの貰っても困るよね。僕は……うーん、なんて言えばいいのかな? 先生とでも呼べばいいよ。黒先生って」

「……黒、先生……」

「そう。それでいい。そして、これは君の症状を緩和させるものであって明確な治療薬ではない。ただ君が……少しでもこの世界で意識を保っていたかったら、飲めばいい。少しだけ抑えることが出来る。成分も教えてはあげられるけど、聞きたいかい?」

「……聞いてもわからないと思うので、大丈夫です」

「それが賢明だ」


 黒先生……は、私に瓶を差し出すと嬉しそうに、にんまりと笑って眼鏡をくいっと上げた。


「ああ……それと、君に忠告はしておくよ。その薬、症状が酷い時以外には飲まない方がいいよ。君はもう……普通ではないのだしね」


 含み笑いを浮かべて、黒先生は手を振って去っていく。


 普通ではない……。その言葉が、ゆっくりと私の体内を汚していく気がした。
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