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Bloody Signal

第31章 shade 千里√



 二人を追いかける暇もなく、教会の外へ出ると見たことのない男の人が「おや?」と不思議そうに私を見つめた。眼鏡の奥には、よくわからない混濁した思いが見えた気がしたけど……たぶんそれは勘違い。知らない人だから、そう思えるだけなんだと思う。


「こんなところで、何をしているんですか?」

「僕かい? ん――なんだろうね……経過の確認、みたいな?」

「経過の確認……?」

「君、確か珠紀ちゃん……だよね? 身体の調子はどう? 何もおかしいところはない?」

「え……?」

「あれ、その様子だと彼から何も聞いてない? まぁ、そうだよね……彼がまず自分から君にそれを伝えるわけもないか。まぁ、僕は僕で彼としっかりと約束しているから僕の判断でこのことを君に話すわけにはいかないんだよね」

「貴方は……何者なんですか」

「僕? 僕はね……医者だよ」


 初めて会う人のはずなのに、なんだかあまり一緒にいてはいけない気がする。どうしてそう思うのかはわからないけど、私の中の勘がそう言っている。


「もしかして僕、警戒されてる? 嫌だなぁ、感謝される覚えはあっても警戒される覚えはないんだけどなぁ」

「私は貴方に……何かしてもらったんですか?」

「うん、してあげたよ。君は覚えてないのかもしれないけど」

「覚えて……ない?」


 覚えてないってことは、過去にでも会ったことがあるの……かな。

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