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Bloody Signal

第31章 shade 千里√



「珠紀、気を付けて帰ってね。またね」

「……お仕事頑張ってね」

「……。ありがとう」


 離れていく、仕事だと言われてしまえば私も反論は出来ないしどうすることも出来ない。それでも私以外の人の元へ、行ってしまう彼の姿をなんだか見ていたくなくて。この気持ちをどう言葉にしたらいいかわからなくて、思わず背を向ける千里へと……抱き着いた。


「ちょっ……珠紀?」

「ごめん……自分でもよくわからないの。でも、なんて言ったらいいか……その」


 ぎゅっと彼を抱きしめる腕の力を強める。もっと一緒にいたい、ずっとこうしていたい。千里の傍にいたくて堪らなくて……千里が私を好きだと言ってくれて、素直に嬉しいとさえ思えて。

 こんな気持ちは、初めて。初めてでどうしたらいいかわからなくて……。


「胸が凄くどきどきするの……」

「……! もう、君って子は……」


 千里が急に振り向いて、ぎゅっと私を抱きしめた。正面から千里を抱きしめて、彼の存在を全身から感じて、言葉にならない想いが溢れる。


「駄目だよ、本当に。本当に……駄目。俺なんかに、そんな嬉しい事……しちゃ駄目」

「そ、そんなつもりは……っ」

「ああもう、今から俺仕事だから! 行くから!」

「あ、ちょっと……!」


 ばっと千里は離れて早足で入口へと駆けていく。莉磨さんは……一度こっちを見たかと思えば、楽しげに私に微笑んで去っていく。あの微笑みは……一体何を意味しているのだろう?

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