第31章 shade 千里√
「ごめん、そこまでは思い出せなかったの。やっぱり全てではないんだね」
「……そこまで思い出せたなら、その先はどっちでもいいんじゃない? 今珠紀はここにいる、ちゃんと生きている。それだけで……俺は」
「千里?」
「いや、なんでもない」
ふと何故か千里の首筋に視線を向けてしまう。どうしてかな? なんだか急に……千里の首に噛みつきたいような。
「千里……」
「どうしたの?」
起き上って気付いたことだけど、私千里に膝枕をされていたんだね。でも今はそんなこと……うん。
どうでもいいの。
「千里の……血が欲しい」
「……おいで」
千里が自ら首を晒し、私に唇を寄せさせる。私はまるでこれが本能のように、千里の首に牙を突き立てた。
「ん……っ」
千里の声がすぐ傍で漏れる。それが堪らなく嬉しくて、もっと彼の声が聞きたいだなんて思えて……夢中で彼の血を啜る。
私はどうしてしまったのだろう? 今までこんな衝動に駆られたことなんて、一度だってないのに。
「珠紀、もっと……もっと貪って、俺を」
彼の血が体内に流れていく。彼の声を聞いて、彼の体温を感じて。少しずつ狂わされていくみたいで、不思議な気分。
「ん……はぁっ」
唇を離して、綺麗に痕を舐める。そうすれば千里もぴくりと身体を反応させ、僅かに声を漏らす。