第31章 shade 千里√
ゆっくりと体温が戻っていくのを感じる。朦朧とする意識の中、瞼を開ければ綺麗なステンドグラスの天井が映し出される。
「此処は……」
「気が付いた?」
声のする方へと顔を上げれば、天井を隠すように千里の顔が私の視界を覆い隠す。
「千里……?」
「ごめん、血を啜り過ぎた。貧血で倒れたみたいだね」
「あ……」
少し前の出来事が、一気に戻ってくる。そうだ、私は千里に血を吸われて……そして。ああ、そう……そうなんだ。
「過去のこと、思い出したの」
「……」
「それが全てなのか、そこまでは私にもわからないけど……でも、両親がどうしていないのか私が入院していたのか何故なのか。ある程度は思い出したんだと思う」
「何処まで……思い出した?」
「……沙耶姉さんのこと、姉さんに私は……心臓を貫かれていたこと。血を、吸われたこと……」
「他には?」
「……他は、特には」
「どうして生きていたのか、は?」
そう言われると、その先を私はまだ知らない。私はきっとあの後、意識を失って……誰かが私の名前を呼んで駆け寄ってきてくれて。彼が救急車でも呼んだのだろうか? それにしても、あの怪我で本当に私はどうして助かったのだろう?