第30章 rewind 千里√
「珠紀……っ、ごめんね……ごめんね……っ」
姉さん……。
「私もすぐ、そっちに行って謝るから……だから……」
姉さんが、懐からナイフを取り出して……自らの首にあてる。やめて……やめてよっ……。
「珠紀、愛してるわ」
鮮血が飛び散っていく。鮮やかな赤が、世界を染めていく。
もう何も聞こえない、何も見えない。真っ暗な闇の中……私は落ちていく。
「珠紀……? 珠紀っ!!」
誰かが、遠くから私を呼ぶ声が聞こえる。でもね、ごめんなさい。私はもう動けないし、瞼も開かないから貴方の事わからないの。でも、聞いたことのある声がするなぁ。誰だっけ。
足音がすぐそこまで来たと思ったら、誰かが私を優しく抱き上げた。
「なんで……どうしてっ! どうして珠紀が死ななくちゃいけないんだっ! おばさんも、おじさんも……良い人だったのに、どうして」
私の顔に、その人の涙が落ちる。冷たい……泣いて、くれてるのかな? ありがとう。ああ、そうだ……。あの人に、せめて最後にあの人に会いたかったな……。
彼に、彼に……。
千里に、会いたかった……な。