第30章 rewind 千里√
「珠紀……っ、それでも貴方だけは……心の底から、愛していたの……せめて両親の元へ、いきなさい。私の手に堕ちることなく……」
「ねえ……さん……」
これは彼女なりの、最後の私への愛情だったのかもしれない。両親がいなくなった私に、それでも生きていくことを選ばなくていいように。彼女がかつて……味わった苦しみを、私が受けなくていいように。
沙耶姉さん。貴方は夫も子も失った時、一緒に死んでしまえたらよかったのにって思ったのかな? そうだよね、辛いよね……一緒にいたかったよね。二人のことを沙耶姉さんは、ちゃんと愛していたんだよね。だから失って辛かったんだよね。
姉さん……姉さん。
「姉さん……もう、大丈夫……」
「え……?」
「私……が、傍に……姉さんの傍に……いるから。もう、怖く……ないんだよ」
「珠紀……?」
「お父さんも……お母さんも……私も……いなく、なったら……沙耶姉さん……また一人、でしょ? 私……姉さんのこと、恨んだり……しないよ。傍に、いる……から……だから」
「珠紀……っ!?」
本当は、少しだけ怒ってやりたいけど……姉さんは泣き虫で、弱虫さんで臆病だから……妹の私が叱って傍にいてあげないと、困るでしょ?
ねぇ、そうでしょ? 姉さん。
「沙耶姉さん……血は、繋がってないけど……でもね……私は本当のお姉さんのように……姉さんの事……慕ってたよ」
「……っ」
「姉さん……大好き、だよ……一緒に……一緒に、生きて……いこう……」
「珠紀……ッ、珠紀っ!!」
姉さんは私を抱き上げて、私に首に牙を立てた。それがどういうことなのか、わかってはいたけど……姉さんがそれでいいなら、いいや。
血の啜る音、体中の血液が沸騰していくように熱い。