• テキストサイズ

Bloody Signal

第30章 rewind 千里√



「珠紀……っ、それでも貴方だけは……心の底から、愛していたの……せめて両親の元へ、いきなさい。私の手に堕ちることなく……」

「ねえ……さん……」


 これは彼女なりの、最後の私への愛情だったのかもしれない。両親がいなくなった私に、それでも生きていくことを選ばなくていいように。彼女がかつて……味わった苦しみを、私が受けなくていいように。

 沙耶姉さん。貴方は夫も子も失った時、一緒に死んでしまえたらよかったのにって思ったのかな? そうだよね、辛いよね……一緒にいたかったよね。二人のことを沙耶姉さんは、ちゃんと愛していたんだよね。だから失って辛かったんだよね。

 姉さん……姉さん。


「姉さん……もう、大丈夫……」

「え……?」

「私……が、傍に……姉さんの傍に……いるから。もう、怖く……ないんだよ」

「珠紀……?」

「お父さんも……お母さんも……私も……いなく、なったら……沙耶姉さん……また一人、でしょ? 私……姉さんのこと、恨んだり……しないよ。傍に、いる……から……だから」

「珠紀……っ!?」


 本当は、少しだけ怒ってやりたいけど……姉さんは泣き虫で、弱虫さんで臆病だから……妹の私が叱って傍にいてあげないと、困るでしょ?

 ねぇ、そうでしょ? 姉さん。


「沙耶姉さん……血は、繋がってないけど……でもね……私は本当のお姉さんのように……姉さんの事……慕ってたよ」

「……っ」

「姉さん……大好き、だよ……一緒に……一緒に、生きて……いこう……」

「珠紀……ッ、珠紀っ!!」


 姉さんは私を抱き上げて、私に首に牙を立てた。それがどういうことなのか、わかってはいたけど……姉さんがそれでいいなら、いいや。

 血の啜る音、体中の血液が沸騰していくように熱い。

/ 276ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp