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Bloody Signal

第30章 rewind 千里√



「二人は私のことを、とても心配してくれた。私が嫌でなければ、一緒に暮らそうと……そう言ってくれた。私はヴァンパイアで歳を取るのが遅い。だから、二人と別れた時の姿のままだったから二人も相当驚いていて。けれど、珠紀のお姉さんとして一緒にいてくれてもいいのだと。そう、優しく言ってくれた」


 ふわりと、姉さんが私をぎゅっと抱きしめた。


「貴方は、とても二人によく似ている……あの人と同じ瞳で、彼女と同じ顔立ちで……愛らしくて、無垢で穢れを知らなくて。いつの間にか私は……夢を見ていたのかもしれない。貴方の傍にいられることが……嬉しくて、嬉しくて……だから」


 姉さんが顔を上げて、私を見つめた時……わかってしまった。もう彼女は手遅れなのだと、何もかもが遅すぎたのだと。虚ろな瞳は、私だけを捉えて……けれど、まるで私を映していない瞳で見つめる。


「あの人が愛した子を、彼女が大切にした子を……いっそ奪ってしまおう。そう、思ったの」


 姉さんの手が、私の胸を貫いた。痛みはある、けど麻痺してしまったようにただぽっかりと……胸に穴が開いただけのような気がして。ああ、でも怖い。少しだけ、怖い。


「そうしたら、全て壊してしまいたくなった。私はこんなにも苦しいのに辛いのに……許せないでしょ? 貴方達だけ幸せになんて……絶対、絶対に許さないっ!!!」


 ずるりと姉さんの手が引き抜かれる。ああ、私ここで死ぬんだ……姉さんに伝える言葉も出ないまま。でも……何を、何を伝えれば……いいのかな。

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