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Bloody Signal

第30章 rewind 千里√



「彼の優しさが、私にはとても嬉しくてそれだけが救いで。私は自分の立場も忘れるように、時間が許す限り彼に会った。彼の顔を見れば元気になる、純血種という立場も忘れてただの一人の女として彼の傍で笑っていられた。でも……それも長くは続かなかった」


 すっと、姉さんの表情が崩れていくのが手に取る様にわかった。


「私は純血種として、遠くへ隔離されることになった。優秀な血を絶やすまいと、別の純血種の者と婚約することになっていた。そんなこと私は望んではいなかった! ささやかな幸せの中で……ただ一人、あの人だけを想っていたかった。そこで私は気付いた、ああ……私は彼が好きだったのだと」


 沙耶姉さんが、お父さんを好きだったってこと? でも、じゃあどうして……。


「貴方のお母さんとはね、いいお友達だったの。幼馴染ですもの……そりゃそうよね。それでね、私が遠くに行く日……彼女は私になんて言ったと思う? 私ね、彼が好きなの。愛してるの。そう言ったのよ。貴方は? って聞かれて……私は答えられなかった。今の私が望めることは、何もないと思った。私が首を横に振ると、彼女は言った。なら私が彼に想いを告げてもいいのねと」

「お母さんが……そんなことを……」

「ええ。私はその言葉にさえ、答えを返せなかった。それでも強がるように"好きにすればいいわ"と言ってしまった。ほんと……時間を巻き戻せるなら、あの時に戻りたい」


 沙耶姉さんは、お父さんが好きだった。でも純血種の運命からは、逃れられなかったんだ。どんなに想っても、姉さんの願いは叶わない。例えお父さんが姉さんを好きだと言ったとしても、この二人が結ばれることは……きっと……。

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