第30章 rewind 千里√
「着いたよ」
「え……?」
辿り着いた場所は、一度来たことのある場所。教会。またここに来れたんだ、と思っていると躊躇なく千里は教会の中へと足を進める。手を繋いでいるせいか、私も一緒に半ば強制的に中へと入っていく。
「ねぇ、もう一度聞くよ。珠紀は過去の記憶を取り戻したいんだよね」
「うん……そうだよ」
「思い出した先に何があっても?」
「……そんな風に尋ねるのは、卑怯だよ」
「そうだね。俺は例え、珠紀が全てを思い出しても……君の味方でいるから。ずっと、守るから」
「千里……」
教会の祭壇の前へ来る。千里は、ゆっくりと私をすぐ傍まで招き入れると……。私の頬を両手で包み込む。
「千里? どうか、したの?」
「ごめん……」
「せん……っ」
千里の顔が近づく。咄嗟に私は、目を閉じた。
唇が、柔らかい何かで塞がれる。角度を変えて、何度も。ああ……私、もしかして千里にキスされてるのかなって今更気付く。
唇が離れたかと思えば、今度は首筋へと唇が下りてくる。
「千里、待って……っ」
「もう……待たない」
一舐め、首筋を舐め上げる。ぴくりと身体が反応したと思えば、がっと肩を掴まれる。
「珠紀……好きだよ」
「……えっ……」
首にぐっと、痛みが走る。強張る身体を押さえつけるように、千里の手はしっかりと私の肩を掴んでいる。耳元から聞こえる、何か啜る音。啜る……?