第3章 Lady
「珠紀を傷つけるような真似、僕が許さないからね」
私達は教室を後にした。
廊下ですれ違う生徒達の視線が痛い。こんな目立つこと……したくない。
「なんでこんなことするんですか、玖蘭さん」
どんどん早足気味に歩いていく玖蘭さんは、やっぱり怒っているような気がする。玖蘭さんが何かされたわけじゃないのに。どうしてそんなに怒ってるんだろう……。
「珠紀はもう少し危機感を覚えた方がいい」
「そう、ですか?」
背中越しから伝わる、玖蘭さんの冷えた声色が私にも恐怖を染み込ませる。ぎゅっと掴まれた手を握り返してみれば、徐々に玖蘭さんのスピードは遅くなり、私の歩調に合せ始めた。
「……優姫が大事にしているものなら、僕も同じくらい大事にするよ」
「玖蘭さん? それは……どういう意味ですか?」
「なんでもないよ。さあ、行こう」
それほどまでに、玖蘭さんと優姫はある程度深い仲なのだろうか?
「玖蘭さんと優姫は……どういう関係なんですか?」
思わず聞いてしまった。聞かない方がよかったかな? いや、でも気になるし……知りたい、とも思うし。
玖蘭さんはこちらを振り向きもしないで、答えた。
「優姫は僕にとって……大切な女の子なだけだよ」
それは一体、どういう意味なのかな。
それ以上聞く勇気は、まだ私にはなかった。