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Bloody Signal

第29章 trigger 千里√





『身体の調子、どう?』

『あ……今日も来てくれたんだね。ありがとう、だいぶ良くなってきてるってお医者さんが言ってた。零は今日学校じゃないの?』

『……俺は、いいの。珠紀の様子、気になるから、見てたい』

『零は心配性だね。本当に、もうどこも痛くないんだよ』

『うん。退院するまでは、会いに来るから』

『ありがとうっ! 零』

『……』




 これは……過去の記憶? 零って呼んでるってことは、相手は零なんだよね。それにしては、相手の顔がもやがかかっていて見えない。いや、でも私がそう言ってるんだから……そうなんだよね。


「どうして、こんなことになっちゃったのかな」


 あの頃の零は、今とは少し違っていたようにも思うけど。大人になるって、そういうことなのかな。嫌でも変わっていくってことなのかな。まぁ、しょうがないんだろうけど。

 そういえば、明日は進路調査票を提出する日なんだっけ。

 なんて……書こうかな。


「あ……っ」


 さっきよりも大きく、目の前が揺れる。今度はそれに耐えられそうにはなかった。ああ、消えていく……目の前にある世界が音もなく。

 私は抵抗することも出来ず、目を閉じた。










 目を開けると、透明な海の中で私は沈んでいる。これは、夢……の中?


『私、貴方に酷いことをしたの』


 貴方は……誰?


『覚えてないの? 私は沙耶。貴方の両親とは、写真仲間でね。趣味で写真を撮るのが好きだった私と、あの人と、彼女。三人でいつまでもいつまでも、幸せな瞬間を撮り続けているはずだった』


 お父さん、お母さんの知り合い……? 私、何も覚えてない。

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