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Bloody Signal

第29章 trigger 千里√



「へぇ……お前、あいつのこと庇うのか」

「庇うとか庇わないとかの問題じゃないの。零、聞いて。千里は私の事を心配して……」

「心配してくれていたら、それがどんな相手でもお前は気を許すのか? お前にとって……酷いことをした相手でも?」

「……何、それ」

「例えばお前の知らないところで、あいつがお前に酷いことをしていたら? お前の忘れている記憶の中に、その出来事があるとしたら? ああ……珠紀は忘れてるんだから、憎みようがないか。いいよな、辛い時の記憶がないっていうのは」

「零……っ」

「お前の両親は、俺の家族と同じようにヴァンパイアに殺されているんだぞ。それは理事長から聞いて、お前だってわかってるはずだ」

「……」

「自分は大丈夫、なんて……思わない方がいいって言ってるんだ」


 いつになく、零の言葉が私に重くのしかかる。それは思い当たる節があるから? それとも……心の何処かで、私はその可能性を捨てきれずにいる? もしかしたら……私が失った過去に、そんな出来事があったら……なんて考えてる?

 そんなわけない。少なくとも、千里は関係ないよ。だって私……千里に出会ったのは、つい最近なんだから。


「……悪い。言い過ぎた」

「零……っ!」


 零は表情を歪めて、俯いて走り去っていく。私は追いかけていいのかわからなくて……彼の後ろ姿を見送るのでやっとだった。

 今まで零には、優しい言葉しか受け取ってこなかった気がする。気が付けば傍で守ってくれて、あの日も……私は……入院中で一人寂しい中。お見舞いに来てくれて……。

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