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Bloody Signal

第29章 trigger 千里√



「大丈夫。ちゃんと一人で、寮まで帰れるよ」

「そう……それならよかった。ほんと、無理だけはしないで。それじゃあ」

「千里、授業……頑張ってきてね」

「何それ。変なの」


 ふっと千里は笑って、もう一度だけ私の頭を撫でると今度こそ、夜間部の人達の輪の中へと戻って校舎へと消えていく。


「おい、珠紀」

「あれ……零。なんか、ちゃんと顔見るの久しぶりな気がするね」


 本当に少し久しぶりな気がする。零はバツが悪そうに顔を背けては、私へと近付いて来る。


「あのさ……お前、あいつと仲良いの? よく一緒にいるとこ、見かけるけど」

「あいつって、千里の事? どうなのかな。仲良くしているように見えているなら、嬉しいかも」


 確かになんだかんだ、優姫達といるよりも千里と居る時間の方が増えているように思える。それが単なる思い込みなのか、事実そうなのかまでは私もはっきりとは認識できていない。けれどあの零がそういうのだから、きっとそうなのかもしれない。

 というか、千里と会っている時はあまり人の目を気にしていなかったから、誰かに見られているかもしれないって意識はなかった。零に見られていたってことは、他の生徒も……だよね。千里は一応モデルなわけだし、よくないよね。気をつけなくちゃ。


「嬉しい? ……ヴァンパイアと仲良いって言われて、何がそんなに嬉しいんだよ」

「そんな言い方しないで。零はそうかもしれないけど……私は」

「俺の気持ちはずっと変わらない。あいつらは、どんなにお前にとって普通に見えたとしても、ただの化け物に違いはないんだ。普通じゃないんだ、もっとそれを理解しろっ」

「でも……少なくとも千里は、私にそんな酷いことも酷い態度も取らないし、本当に普通に仲良くしているよ。そう思う気持ちも、わからないとは言わない。けど、何も知らないのにそんなこと言わないで!」


 どうしてかな、自分に対して何か言われている訳でもないのに。千里のことを酷く言われている気がして、少しだけ……かっとなる。

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