第28章 kiss 千里√
「せ、千里!?」
「ありがとう……凄く、嬉しい」
まさかそんなに喜んでくれるなんて思いもしなかったから、びっくりしたけど……なんだか急に千里のことが愛しく感じて、私も彼を抱きしめた。
こんなところを、誰かに見られたら恥ずかしくてどうにかなってしまいそうなんだけど……気にもならないくらい、私は時間が許されるなら……ずっとこのままでいられたらなんて、馬鹿なことを考えてしまった。
そっと千里の腕が離れる感覚に、私も腕を離す。
「少し、照れくさいね」
「……っ、うん……っ」
ちょっとだけ照れている千里を見て、私までつられるように恥ずかしくて……顔を伏せた。
「ねぇ、冠の作り方。教えて」
「……いいよ」
暖かい陽だまりのように、千里と一緒にいると心の中が暖かくて……同時に千里の事ばかり考えてしまって仕方ない。優しく見つめてくれる瞳が、男らしい腕の中が、甘く聞こえてくる声が、どれもが私を捕え始めている。
一生懸命花の冠を作り始める千里に、もっと触れていたくて思わず彼の頬へと手を伸ばした。
「珠紀?」
「……へっ!?」
撫でた彼の頬は、すべすべしていて綺麗で……。触れてしまったことが、いけないことみたいに感じてしまう。