第27章 aloud 千里√
「明日、絶対忘れないでね? お弁当、ちゃんと卵焼き入れておいて」
「実はそれが狙いとかじゃないよね?」
「……そんなことはないよ」
「その間が怪しいのですが」
明日もまた千里に会えるんだって思うと、なんだか嬉しいなって素直に思う。千里がどう思っているかはわからないけど……それでも、やっぱり嬉しい。
自分の弱さは誰にでも曝け出せるわけじゃない。実際私は優姫や零達に千里に話したようなことは一切言っていない。自分の恐怖も、その全ても。
理解してくれなんて言わない、わかってほしいだなんて思わない。それでもただ、静かにそれを聞いてほしかった。誰か……と思いながらも、特定の誰かにだ。それが千里だったのかまでは、私にもよくわかってないけど嫌じゃないとは思った。
千里はこんな私を……嫌になったりしないのかな。
「またそういう顔してる」
「ん?」
ぷにっと千里に頬を抓られた。びっくりして瞬きを繰り返しながら、千里を見つめると彼はぷっと吹き出して笑いながら言葉を続けた。
「俺は珠紀を嫌いになったりしないよ」
「……っ」
「おやすみ」
欲しい言葉をくれるのは、何故だろう。
心の中にあった氷が、次々に融けていく気がして……どうしようもなく、千里のことが……頭から離れなくて。そんな自分に、今更気付いていく……。