第27章 aloud 千里√
「もう何もかも全て……消えてしまえばいいのに……っ」
ふわりと、身体が何かに包まれる感触がした。
「……え……っ?」
「ごめんね……珠紀。ごめん」
「千里? な……なんで謝るの……」
「俺は珠紀が望む未来を、与えてあげられないから」
「……いいの、大丈夫……ちゃんと……ちゃんとわかってるの」
私の方こそごめんなさい。その意味を込めて、彼を抱きしめ返した。千里の腕の中に抱かれて、私はさっきまで薄れかけていた意識がはっきりと輪郭を得て、今はちゃんと自分の手元にあることを確認して安堵した。
手放したくない、この瞬間を。
「俺が傍にいる……だから、一人じゃないよ」
気休めでいい、例えそれが嘘だとしても。それでも……千里の言葉は、あまりにも素直に私の中へ流れ込んできて、胸の奥が熱くなる。
そうだったらいいなって思ってしまう。
「お願い……一人に、しないで……」
一途に彼を求めるように、ぎゅっと抱きしめた。
暫くそのまま時が過ぎて、互いにゆっくりと離れた。
「寮に戻る?」
「……うん」
少しだけ浮かない表情のままそう答えれば、ぽんぽんっと千里が私の頭を撫でた。