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Bloody Signal

第27章 aloud 千里√



「だって私のこれは……明らかに異常だからっ!」


 千里は何も答えない。ただ、ピアノを奏で続けている。


「陰で呟く声が聞こえるの。あの子、変だよね……急に倒れたりするし、気持ち悪いって。だけどその度に、零が私の代わりに怒ってくれるの。優姫も、私の代わりに皆に違うんだよってこれは仕方ない事なんだよって言ってくれるの。それがどれだけ……どれだけ嬉しかったことか」


 永遠にこの病気が治らないのなら、じゃあもう何も変わらなくていい。今のままでいいから、これ以上何も奪われませんようにと、祈り続けた。


「本当はね……理事長に、学校に通うのは無理じゃないかって言われたの。先生達には事情を説明しておくからいいとして、普通の子として……皆と同じように過ごすことは出来ないと思うって言われて。でも私は納得できなかったの! だから反対を押し切ってこの学校に入学したの」


 残酷なことに、理事長の言う通りになってしまったけど。


「愚かでしょ……? 心の何処かでわかっていたはずなのに、いざそれが現実になった時……消えてしまいたいって思った」


 医者から治療法はないって言われた時は、目の前が真っ暗になったのを覚えている。でもあの時は優姫も零もいるし平気だって。

 でも変わらないものなんて、ない。人は変わっていく、移ろいゆく。成長していくにつれて、私達には"進路"という名の選択肢が待ち受けている。そこで三人共、同じ選択をするはずはないだろう。それぞれが自分の思い描く未来に向かって、その為に選択するのだから。

 ずっと同じでは、いられない。

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