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Bloody Signal

第27章 aloud 千里√



「珠紀が受け入れられない部分を、俺が全部受け止めてあげる」


 じわりと心へ浸透していく。彼のピアノの音に耳を傾けながら、泣いているのがばれないように俯いた。

 どうして……そんなことを言ってくれるのだろう。まるで、私の心の内を彼に見透かされている気分だ。


「泣いていいよ。誰も、見てない。聞こえてないから」


 ただ、その場で泣き崩れた。彼のピアノの音が、私の泣き声を掻き消していくように響き続ける。


 ずっと、ずっと恐ろしかった。瞼を閉じても、開けていても私はこの世界で酷く孤独だった。両親はいなくなった、友達と呼べる人は優姫と零以外にいなかった。彼女達のいない私の世界は、本当に一人ぼっちだった。

 だから一生懸命、学校に通い続けた。他の人になんて言われようと、ほんの少しでもいい……皆と同じ時間を過ごしたかった。


 退屈だと呟きながら授業を受けて、気だるい行事に参加して、騒ぎながら休み時間を過ごして。放課後は、一緒に帰ってみたり。


「……怖かった……っ」


 誰かに聞いてほしかった、知ってほしかった。私が隠し続けた、恐怖を。


「皆とは違うことを知って、私は化け物にでもなったんじゃないかと……そう思ったらっ……眠っているのも、起きているのも恐ろしかったっ」


 起きても誰もいない。眠る瞬間も、誰もいない。

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