第27章 aloud 千里√
「……じゃあ、考えておいて」
「……あっ」
千里はふわりと私を抱き上げると、私の寮の方へと歩き始める。考えておいてって……なんで? 本当に誰かが……やったとでもいうの?
「千里。ねぇ、千里……」
「なに?」
「私のこの病気は、自然になったものとは違うの? だからそんなことを言うの?」
「……ううん、聞いてみたかっただけだよ」
「でも、急にそんなこと言うなんて……変だよ」
「そうだね。ごめん」
「……っ」
彼が何を考えているのかわからない。元々心の内は読めないような人だ、とは思っていたけどそれだけじゃないような気もする。彼自身、悟られない様に振る舞っているというか……そういう雰囲気に思える。
でも確かに私は、まだ千里の事を何も知らないに等しい。
ならば、彼と一緒にいる時間を多く過ごせば彼の思っていることを、少しでも理解することが出来るのだろうか?
寮に向かうのかと思えば、敷地内にある教会へと入っていく。初めて教会に入った気がする……。
椅子に座らされて、千里は檀上近くにあるピアノへと足を延ばした。
「俺はね……珠紀にはいつまでも笑っていてほしいって思うんだ」
「え……?」
「幸せになってほしい、それがどんな形であったとしても。その時俺は……ちゃんと珠紀のこと、祝福するつもり」
「千里?」
「今の自分を全部受け入れなくていい、好きになんてならなくていい。俺はその分珠紀を大切にするし、珠紀自身が嫌いな部分を俺が代わりに好きになってあげる。こんな言葉しか……今は言えないけど。自分の全てを、全部受け入れようとしなくていいんだ」
千里が静かに、ピアノを奏で始める。