第27章 aloud 千里√
ふと身体が重力に従うように、がくりと崩れ落ちた。咄嗟のことではあったけど、千里が私の身体を支えてくれたから倒れずには済んだ。ただ少し、意識が何処か遠くにあるような気がした。
「……平気?」
「うん……だい、じょうぶ……」
混濁しそうな意識の狭間で、ぎゅっと千里の腕を掴んだ。
「だんだん、世界から私が消えていく感じがするの」
弱気な言葉が、ぽつりと口から出た。
「眠っている間は、外の世界の事なんて私は何も知らなくて……突然切り離された私は、それでも皆と同じでいたくて……そう在ろうって頑張るんだけど、でも駄目なの。眠ってしまいたくない、もっと皆と……同じ時間を、過ごしていたいのに」
「珠紀……」
変だなって思った。そんなことを彼に言ったところで、別に何かが変わるわけじゃないのに。
「ごめん、なんでもないの。少しだけ、混乱しただけ。いきなり意識が薄れて、驚いただけなの」
「……珠紀はもし、その病気のきっかけを作った人物が存在したとしたら、許せない? 怒る?」
「何を言って……」
「答えて」
千里を見れば、少し怒っているような……それでいてとても真剣な目をしていたから、私はおずおずと答えるしかなかった。
「わからない……」
だって本当にわからない。そんなこと、考えたこともなかったしもうこれは仕方ないんだって、受け入れなきゃいけないんだって思っていたことだから。この病気が意図して発症させられたものだって言われたとしても……そんなの。わかんないよ。