第26章 dear 千里√
「夜間部の人達、見に行く? 確か支葵先輩と知り合いだったよね、珠紀」
「知り合いっていうか……うんと、まぁ」
「昨日倒れた時、真っ先に珠紀に駆け寄って抱き上げた時には驚いたよ」
「そうだったの?」
「うんうん! ちゃんとお礼言った?」
「……今日、改めて言っておく」
「それがいいよ。じゃあ、行こうか」
私が倒れた時、真っ先に来てくれたんだ……。あのおっとりしていそうな千里が? 真っ先に? 少しだけ想像してみたけど、どうしてもイメージが湧かない。そんなことをごちゃごちゃ考えていたら、いつもの夜間部と普通科の境界線にある門まで来ていた。
「はいはい! 押さないで! 整列して下さいっ」
優姫が元気よく声を張り上げながら、女子生徒達を整列させていく。私はそれを眺めているだけ。押されたりしたら怖いから、少し離れたところから夜間部の人が来るのを待っている。あ、でもこんなに離れていたら千里にお礼が言えないかな。
すると、門が開く。同時に女子生徒の黄色い声と、金髪の目立つ男の子が「やっほー! 女の子達!」と声を上げているのだけが耳に入る。いつもこんな感じなのかな。
後ろの方から千里と、一度庭で初めて千里に会った時に見かけた女の子と一緒にいた。どうしようかな、どう声をかけようかな……。
「珠紀」
「へっ……?」
この声は……。驚いて横を向けば、いつの間にか玖蘭さんが隣に立っていた。そういえば、一番前を歩いていたから見てなかったかも。