第3章 Lady
「珠紀! 私、理事長に呼ばれているからすぐに行かなくちゃ。一人で帰れる?」
「うん、大丈夫だよ」
優姫は心配そうにしていたけど、笑顔で返せば「ごめんね」と一言だけ告げてすぐに飛び出していった。もしかして、何かあったのかな?
「時東さん。今少しいいかしら?」
ふと、珍しくもクラスの女子数人が私に声をかける。どことなく、嫌な雰囲気を漂わせながら。教室内も心なしか、緊張感に満ち始める。
「何かな?」
「あのさ……時東さんっていっつもあの二人といるよね」
「そうそう。風紀委員と仲良くして、夜間部の人達とお近づきになるつもりでしょ!?」
「え……?」
私が? な、なんで急にそういう展開になるの……っ?
「とぼけても無駄よ! 数名が校舎内で玖蘭先輩に抱えられている姿や、支葵君と中庭で一緒にいるところを見てるんだから!!」
「……っ」
見られていたんだ……っ!
夜間部と一緒にいるところを見られるということは、こうやって妬まれることを意味していたのはわかっていた。ただでさえ、クラス内で疎まれている私がこんな事態……良いとは思えない。
「なんとか言ったらどうなの!?」
怒鳴り声に、びくりと身体が強張る。別に何も悪いことをしていたわけじゃないのに、こんな理不尽……。