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Bloody Signal

第26章 dear 千里√



『こんにちは』

『こんにち……は?』


 幼い、私? もしかして昔の記憶? いや、ただの夢かな。幼い私は白いワンピースを着て、外に咲いている花をじっと眺めていた。そこへ一人の男の子が声をかけてきたのだ。


『そこで、何してるの?』

『お花を見てるの』

『見てるだけ?』

『うん、そうなの』

『だったら……俺が君に面白いものを見せてあげる』

『なに!?』


 少年は私の隣にしゃがみ込むと、花に手を伸ばし手折り始める。幼い頃の私は、それがいいことなのか悪いことなのかよくわからなかったみたいで……その光景をじっと、興味深そうに眺めていた。

 彼は名前も名乗らず、ただひたすら花の茎を使って何やら編み始める。何を作っているのだろう?


『ん、出来た』

『わ……っ』


 彼の手の中には、綺麗な花の冠が出来上がっていた。


『凄いっ! お花で冠、作れるの!?』

『うん、そうだよ。はい』


 彼はそっと、私の頭に冠を乗せる。あまりにもそれが神秘的で、可愛くて綺麗で……私は彼に笑顔で声をかけた。


『嬉しいっ! ありがとう』

『……っ! どう、いたしまして』


 ぎこちなく笑う彼は、まるで私がお礼を言うことなどまったく予想していなかったみたいな反応だ。けれど彼は照れくさそうに、やっぱりどこか嬉しそうに私に「作り方、教えようか?」と言ってくれる。

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